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口腔ケアが“続く”提案、できていますか?動物病院でできる伝え方の工夫
更新日:2025.8.12

まずは「できることから始められる」提案を
口腔ケアを提案する際、いきなり「歯ブラシで毎日磨きましょう」と言っても、ほとんどの飼い主は戸惑います。
重要なのは「段階的にステップアップできる」方法を示し、「今すぐ始められる選択肢」を複数提案することです。
成功体験を積むことで、自然と次のステップにも意欲的になれるからです。
歯磨きステップアップの例
口腔ケアに慣れていく過程をステップで示すと、飼い主は「今どこにいるか」「次は何を目指せばよいか」が視覚的に理解しやすくなります。
ステップの一例:
- 1.口に触れることからスタート
- 2.歯を見せる・触ることに慣れる
- 3.ガーゼや歯磨きシートを使って拭いてみる
- 4.歯ブラシにステップアップ
- 5.続けやすい工夫と補助ケアを取り入れる
たとえば、「歯に触られることに慣れてきましたね。ガーゼを使って歯を拭いてみましょうか」といった具合に、段階ごとの目標を提案すると取り組みやすくなります。
飼い主ごとに合う“選択肢”を提案
「歯ブラシで磨けないと意味がない」と思われがちですが、それだけが手段ではありません。ケアの質と実施率のバランスを考えながら、以下のような代替・補助的なアイテムを活用することで、飼い主それぞれに合った方法を提案できます。
- デンタルジェル/フォーム:歯や歯茎に塗って使うタイプ。歯ブラシが苦手な子にも使いやすい。
- 水に加えるケアウォーター:飲み水に混ぜるだけの簡単ケア。特別な操作が不要で、日常の中で無理なく続けられます。
- 噛むおもちゃやデンタルトリーツ:噛むことにより歯垢の付着を抑える補助的なケア。遊びながら取り入れられるのが特長。
- 歯みがきシート:ガーゼのように指に巻いて歯の表面を拭き取るケア用品。歯ブラシに抵抗がある場合の導入ステップとしても活用しやすく、力加減を調整しやすいのも利点です。
これらを「Aが苦手でもBやCならできるかもしれませんね」と“選べる形”で提案することが継続の鍵になります。
伝え方の工夫が継続率を左右する
提案時のコミュニケーションにも工夫が必要です。以下のような工夫を意識すると、飼い主の理解とモチベーションが高まります。
飼い主と“今できていること”を共有すれば、次に目指すステップが明確になり、無理のない指導ができる。
ポイント:「まだここしかできていない」ではなく、「ここまでできている」ことを言葉にして伝えるのが大切です。小さな成功体験を具体的にほめる:飼い主が「やってよかった」と思えるようなポジティブな声かけが、継続への後押しになります。
声かけ例:「口を触らせてくれるってすごいことですよ!まず最初の一歩、ばっちりです」「嫌がらずに触らせてくれるなんて、信頼関係がしっかりできている証拠ですね!」
ポイント:“できた”ことを具体的に言葉にしてあげることで、飼い主自身が「前に進めている」と実感できます。-
費用対効果も示しながら、無理のない継続を提案する:「高価なものをすすめられるのでは」と不安を抱く飼い主も多いため、コストの目安を伝えながら“無理なくできる”印象を持ってもらうことが大切です。
声かけ例:「月数百円ほどのホームケアで、歯周病リスクを軽減できる可能性があります。将来的な処置や麻酔の回避にもつながるかもしれません。」
ポイント: “予防=投資”の意識を後押しする言い回しが効果的です。 -
完璧を求めず「できる日の積み重ね」を促す:飼い主の中には「全部の歯を毎日しっかり磨かないと意味がないのでは…」とプレッシャーを感じてしまう方もいます。
そんなときは、“一部だけでも、できた日の積み重ねが大事”という考え方を伝えてあげましょう。
声かけ例:「全部の歯を毎日磨こうとしなくても大丈夫ですよ。今日は前歯だけ、明日は奥歯だけ…でも続けていればちゃんと意味があります」「忙しい日は片側だけでもOK。やらない日が続くより、できる範囲で続けていく方がずっと効果的です」
ポイント:完璧を求めるのではなく、“ゆるやかでも継続していること自体が価値”であると伝えることで、飼い主が安心して前向きに取り組めるようになります。
これらの工夫により、「やってみようかな」と思える心理的ハードルを下げることができます。
おわりに
口腔ケアの習慣化には、 “ステップアップ方式”と“選択肢の提示”が大きな効果を発揮します。
大切なのは、「正しい方法」だけでなく、「続けられる方法」を一緒に探す姿勢です。
飼い主と伴走しながら、その子に合ったケアを一緒に見つけていきましょう。